生成AI音楽の「Suno AI」と「Udio」が大手レコード会社から訴訟を起こされていますが、それに関連して配信サイトで生成AI楽曲の配信を不可にする流れが加速してきました。
ディストリビューター最大手の「TuneCore」でも生成AI楽曲の配信が不可になりましたが、2025年05月01日から「narasu」でも生成AIの利用規約が改訂されて100%生成AI楽曲の配信は不可となりました。
そして2025年05月14日に2025年6月30日をもって「sprayer」からサービスを終了とするとの通知がありました。
AIを使用したリリースに関するガイドラインをチェックすると生成AI楽曲の「Suno AI」と「Udio」はグレーの過渡期ではなく完全にブラック認識で間違いありません。
各ディストリビューターの対応
アメリカの3大メジャーレコード会社やドイツのGEMA(著作権管理団体)が音楽生成AI「Suno」や「Udio」を著作権侵害で提訴しています。
Sunoは学習データに使用した楽曲のライセンスを持っていません。有料プランの人間に与えられている楽曲所有権は訴えられているSuno AIが勝手に決めているだけの話です。
音楽の著作権を持っている人たちが認めているものではなく、著作権者の許可なく勝手に使用しているということです。
ディストリビューターは「AIのみで楽曲生成されていないこと」「著作権をクリアしている必要がある」など条件付きで現在も配信を認めています。
しかし規約やQ & Aを細かく見るとAI生成の「Suno」や「Udio」は「無断利用 = 著作権侵害」をしていますので一部利用すらアウトです。
以下に主要ディストリビューター別に「生成AI音楽の禁止」に該当する部分を抜粋しました。
TuneCoreの生成AI音楽への対応
01.楽曲が100%AI生成によるもの(楽曲のすべての要素がAIによって生成され、人間による作曲等の創作的表現が生成の前後を問わず一切含まれていない場合をいい、人間がクエリ入力のみを行った場合も含みます)でないこと。
02.AIサービスによるコンテンツの生成及び当該コンテンツの配信等による利用について、必要となる許諾等が全て取得済みであり、生成に際して用いられる学習データ等の構成要素(楽曲・歌詞・原盤等を含みます)に係る第三者の権利を侵害するものでないこと。
03.なお念のため、上記の全ての要件に当てはまる場合あっても、当社の利用規約または配信ストアの定める基準等に基づき、当社の判断により承認されない場合があります。
往生際の悪い人だとマスタリングなどで、ちょっと手を加えれば配信できるのではないか?と考えていそうな人もいそうですが「学習データ等の構成要素に係る第三者の権利を侵害するものでないこと。」で「Suno」は「Udio」は確実に引っ掛かります。
BIG UP!の生成AI音楽への対応
01.第15条(禁止行為)
2.第三者の財産(著作権、商標権、意匠権等の知的財産権を含みます)、プライバシーもしくは肖像権を侵害すること、又はそのおそれのある行為をすること。
02.第12条(会員の創作原盤等の管理)
13.前各号のほか、当社が本サービスの運営にとって不適切と判断する場合。
上記はBIG UP!の規約からですが、著作権、商標権、意匠権等の知的財産権を含む「第三者の財産を侵害」することは禁止されています。
元々、BIG UP!は生成AI音楽への対応が早かったですが、利用規約で禁止するだけでなく「生成AI音楽のガイドライン」を公開したほうがよいと思います。
narasuの生成AI音楽への対応
権利を侵害する行為や不正な方法による楽曲申請は禁止いたします。
AIによって生成されたコンテンツやその配信に関連して、使用された学習データ(楽曲・歌詞・原盤など)が第三者の権利を侵害していないこと。
TuneCoreの生成AI音楽禁止の対応で流れ込んだ人が多かったと見られる「narasu」は2025年05月01日に生成AI音楽を禁止にしました。
sprayerサービス終了と配信サイトからのAI生成音楽の除外
sprayerサービス終了
2023年08月に音楽配信代行サービスを開始した「sprayer」から、2025年6月30日をもってサービスを終了するとの発表がありました。
生成AI音楽の配信をTuneCoreやnarasuが禁止にするなか最後の砦で人が流れこんだと思われますが、音楽業界での方向性は明確に示されていたにも関わらず、sprayerは事の重大さに気づくのが遅かったような気がします。
正式リリース以降、音楽活動をする皆様の一助となれればと思い、スタッフ一同で取り組んでまいりましたが、今後の運営体制や市場の変化を踏まえ、誠に勝手ながら本サービスを終了させていただく運びとなりました。
日頃よりご愛顧いただいておりますご利用者の皆様には、これまでのご利用に深く感謝申し上げますとともに、サービス継続が叶わないこと、また、突然のお知らせになりましたことを心よりお詫び申し上げます。
生成AI音楽を配信しているTuneCore利用者がnarasuへ移り、narasuが禁止にしたのでsprayerに移ったと推測できますが「今後の運営体制や市場の変化を踏まえ」がポイントだと思われます。
sprayerはAI生成楽曲を排除したときにサービスが維持できないと判断したのかな?と推測されますが、「Spotifyの報酬なしになる楽曲が大量に増える改正という名の改悪」で書いたことも影響していると思われます。
1曲は報酬は少額でも、大量の楽曲を配信代行をするディストリビューターは「塵も積もれば山となる」で、そこそこの収益は改悪前のSpotifyからは出ていたはずです。

sprayerからの移行先
今回のサービス終了で無料で配信できた「DEBUTプラン」は、2025年6月末〜2025年9月末の間に順次配信停止となり、有料の「BOOSTプラン」は有効期限後に順次配信が停止されます。
無料プランで多くの楽曲を配信していた人は「BIG UP!」や「narasu」への移行が順当かと思われますが、「Suno」による生成AI音楽は禁止となっていますので注意が必要です。

学習データに第三者の権利を侵害している生成AI音楽サービスを利用してしまっている人は、現在は受け入れ可能なところでも、音楽業界の方向性や流れは出ています。
楽曲1件につき最高約2,400万円の莫大な損害賠償の請求をされていて「知らぬ存ぜぬ」は通用しない流れなので、火の粉を被りたくない他の配信サイトも時間の問題です。
AIが悪なのではなく無許可の権利侵害が悪である
DTMが象徴ですが音楽業界はテクノロジーの進化を取り入れながら発展してきた業界です。AIに関しても肯定的な人も少なくありません。
しかし、それは「権利侵害がないのが前提」です。自分では大した創作のできない頭の弱い人だとAIを一括りに考えがちですが、企業の使っているAIは権利侵害をしていないのが大前提となっています。
Sunoサイドのフェアユースの主張は認められないと思われますが、日本の著作権法には、フェアユースに相当する規定自体がありません。
作詞家の人で利用者が多そうなAI生成の「Suno」や「Udio」ですが、利用が判明した瞬間に、権利侵害者には厳しい一般の音楽業界への道が閉ざされるだけでなく、音楽業界に携わっている人は近づかなくなってゆくと思います。
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