国内ディストリビューターでは、音楽生成AIを使用した音楽の配信ができなくなったり、sprayer が潰れたりと、音楽配信サービスの転換点と見ることができる流れが来ています。
そんな中で、無料で音楽を配信することができる音楽配信代行サービス「BIG UP!」の利用規約の一部が2025年09月に改定されました。
SNS上でも「仕方がない」「改悪だ」など、様々な反応がありましたが、申請楽曲数の制限と配信停止の可能性が今回の BIG UP! の大きな変更点です。
BIG UP! もボランティアではありませんので、個人的改悪だとは思いませんが、インディーズ系、インディペンデント、DIYアーティストで利用していた多く人たちには厳しい規約改定です。
BigUpの規約変更とポイント
2025年9月の利用規約の改定
BIG UP! で「用語の定義」「申請楽曲数の制限」「配信代行サービス利用手数料」「配信停止」の改定が2025年09月01日よりされましたが、音楽配信で利用している人の視点で見ると、以下の第6条の2(申請楽曲数の制限)と第24条(配信停止)がインパクトのある大きな改定です。
1. フリープラン会員の配信タイトルは商品形態(シングル、EP、アルバム)を問わず、配信代行サービスの申請制限を設けるものとし、月1タイトル申請できるものとします。
2. 申請の審査の結果(差戻し、否認)となった場合、及び未承認も1タイトルとします。
3. 毎月1日から月末までをひと月とします。
4. 前月の残申請数は翌月への繰り越しはできないものとします。
◆第24条(配信停止)
3. 配信中のタイトル収録の創作原盤のうちいずれかについて過去12ケ月の期間で全世界での再生回数が累計 1,000回未満であった場合、当該タイトルの配信を停止する場合があります。
改定ポイント1「フリープランの申請上限数が月に1タイトル」
記念配信を含めると相当な数の申請数があると思われますので、フリープランの申請上限数が月に1タイトルとなったのは理解できます。
しかし、申請の審査結果が差戻し、否認、未承認となった場合も、1タイトルとしてカウントされてしまうのは厳しい気がします。
多分ですが、利用規約やジャケットルールを読んでいなかったりで、ミスして申請する人が多いのが原因に思えます。
改定ポイント2「1,000回未満の再生数は配信停止の可能性」
全世界での再生回数が過去12ケ月の期間で累計 1,000回未満であった場合、そのタイトルの配信が停止される場合があります。
これは多くのユーザーがディストリビューターの変更まで考えなければならない、とにかく厳しい改定となります。
以前「Spotifyの報酬なしになる楽曲が大量に増える改正という名の改悪」で「ストリーミング配信されている楽曲の4割以上が10再生以下」「Spotify にアップロードされた1億曲のうち6,200万曲が無報酬となる」「メジャーリリース作品でも過去の楽曲やヒット曲のないアーティストの楽曲などは年間1,000再生越えない楽曲も多数」と記載しました。

再生数1,000のラインは、Spotify のみではなく、全配信サイトが対象となるので、インディーズ系、インディペンデント、DIYアーティストでも、消してクリアすることのできない数字ではありません。
しかし、しっかり音楽活動している人は、年々、配信する楽曲も増え、当然、SNSやWEBサイトでPRする楽曲は変わってゆきます。
過去にリリースした曲をいつまでプロモーションするということは、まず考えにくいので、過去にリリースした楽曲の再生回数は減ってしまいます。
その状況で、特に BIG UP! のフリープランを利用しているユーザーの多くには、1,000再生を毎年続けてゆくのはハードルが高すぎます。
BIG UP!の苛立ちに見える規約改定
本当に配信停止になるのか?
もし、毎年、1曲で1,000再生越えるくらいのファンやリスナーがいるのであれば、還元率の低い BIG UP! のフリープランは利用してないはずです。
規約改定後に配信される楽曲に関してはわかりませんが、今までリリースした楽曲に関しては、個人的には1,000回未満の再生数でも、停止になることはないと考えています。
改定後に配信された楽曲に関しても、あくまでも「再生回数が累計 1,000回未満のタイトルは配信を停止する場合がある」なので、年間300~500再生くらいあれば配信停止にはしないのではないでしょうか?
BIG UP!の苛立ち
無料で各ショップに楽曲配信をすることができた「sprayer」の2025年6月30日をもってのサービス終了に関しては「生成AI音楽がブラック認定で配信サイトから排除の流れに」で記載していますが、sprayer 終了もBIG UP! の規約の改定に影響していると考えてよいでしょう。

無料で楽曲を配信したいユーザーが、sprayer から一斉に BIG UP! へ移動したことは誰もが容易に想像できます。
その一方で、BIG UP! の運営スタッフにとっては、膨大な申請対応に追われる大変な状況であったことも想像することが難しくありません。
楽曲配信の申請時の記入ミスによる差し戻しや、規約で禁止されている音楽生成AIによる楽曲を申請するマナー違反者なども多数いたことでしょう。
本来であれば、他サービスからのユーザー流入は歓迎されるべき出来事ですが、実際には手間ばかり増え、配信しても再生数は伸びず利益にもつながらないとなると状況は変わってきます。
ほとんどボランティアみたいな作業になった結果、利用者側への苛立ちが募り、改悪と受け止められる規約改定にまで発展したのだと思われます。
sprayerとBIG UP!で感じる無料配信の限界
サービス終了のリスク
2025年9月の利用規約の改定からは BIG UP!の利用者への苛立ちを感じることができると同時に、無料での楽曲配信の限界を感じることができます。
利益を考えずに楽曲を配信している人間よりも「塵も積もれば山となる」といった感じで手数料を取っていたディストリビューター側に「Spotifyの報酬なし」はダメージがあったのは一目瞭然です。
勘の良い人やビジネス感覚みたいなものがある人などは sprayerのサービス終了で、無料での楽曲配信の限界や危険性に気づいたはずです。
現在の各配信サイトの還元率だと、無料での音楽配信代行サービスは、ほとんどの場合で「ビジネスとして成立してない」ので、サービス終了のリスクがあると、漠然とではなく明確に感じたのではないでしょうか?
1曲1曲は立派な財産
楽曲配信している人のなかでも、サブスク配信で利益を出すことを考えていない人のほうが多いのが現状です。
Apple MusicやAmazon Musicで自分の曲があるだけで幸せな人や、ライフワークの一環として楽曲配信している人もたくさんいます。
テイラー・スウィフトのようなビッグアーティストのように利益は生み出せませんが、楽曲を配信している人にとっては1曲1曲は思い入れのある立派な財産です。
BIG UP! で規約通りに「再生回数が累計 1,000回未満であった場合、当該タイトルの配信を停止」が実行された場合はサービス終了と同じとなり、大事な財産はネットからは消えてしまいます。
多くの場合で、ある程度お金と時間を掛けたプロモーションをしないと、サブスクで再生回数を稼げるはずはないので、BIG UP! のフリープランで配信している楽曲は1年限定配信と考えるべきです。
配信楽曲 = 財産を守るために
楽曲の配信申請は手間が掛かる
sprayer のサービス終了で、無料配信はサービス終了のリスクに気づいた人などは、低価格で無制限に楽曲配信をできる「narasu」あたりに BIG UP! の規約改定の告知前に計画的に移り始めたと思います。

経験したことのある人はわかると思いますが、楽曲の配信申請は楽曲に関する様々な情報を書き込まなければならないので、時間と手間が掛かります。
sprayer のようにサービスが終了されると、著作権管理も終了して再申請が必要となりますので、曲数が多い人は別のディストリビューターに移動するのも、一気にやろうとすると、かなり大変な作業となりミスも出ます。
自分の「配信楽曲 = 財産」を守るための行動
それでも、一般的に考えて、ほとんどの人が達成が難しい再生数ルールを BIG UP! が規約に入れてきた以上、「配信楽曲 = 財産」を守るための行動に移るべきです。
実際はやらない気もしますが「再生数がないと1年間で配信停止しちゃうかもしれないよ~?」な感じで脅しとも取れる規約は、気分的によいものではありません。
配信サブスクプランが用意されている他のディストリビューターに、時間を持って計画的に移動するのがよいと個人的には思います。
個人的には「無料であるので仕方ないのでは?」というところなので「改悪」とは言えないかな?といった感想です。
次回は今回書いた無料配信はサービス終了のリスクもあることも踏まえて「BIG UP! フリープラン利用ユーザーが歩む道」について詳しく書きたいと思います。
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