Spotifyの改悪で楽曲配信者の選ぶ道

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前回書いた「Spotifyの報酬なしになる楽曲が大量に増える改正という名の改悪」が思った以上にアクセスがあるので、予定より早く第2回目となる Spotify が2024年04月に行った改悪に関する記事を公開します。

今回は「Spotifyのみで1,000再生の壁」「楽曲配信者の選ぶ道」「Spotifyも配信プラットフォームのひとつでしかない」などについて書いています。

Spotifyのみで1,000再生の壁

12ヶ月で1,000再生の壁

4割以上の楽曲が10再生以下というデータを2023年08月に目にしましたが、YouTube Music、Apple Music、Amazon Music、AWA、LINE MUSICなどの合計で、12ヶ月で1,000再生というのは、けして難しい数字ではないです。

音楽のサブスク配信は、動画サイト YouTubeで1,000再生を得るよりも遥かに難しいですが、SNSやライブを上手に使ってプロモーションすれば達成することのできる数字です。

しかし、Spotify限定で1年間1,000再生となると、配信プラットフォームが数え切れないくらいある現状では、再生回数は確実に分散されてしまいます。

そんなこともあり、一部を除いたインディーズ系アーティストや、インディペンデント・アーティストには、かなり難しい数字となります。

メジャーリリース作品でも安心できる数字ではない

よく実情を知らずにヒット曲しか聴かないリスナーから「1,000再生も行かないアーティストは自称ミュージシャンでしかない」みたいなコメントを目にしますが、メジャーリリース作品でも1年間1,000再生は、けして安心することのできる数字ではないです。

人気アーティストや過去にヒット曲のあるアーティスト以外は、プロモーションなしに楽曲配信しただけでは曲は聴かれませんので、1,000再生に届かない楽曲も確実に存在しています。

スマッシュヒット程度の楽曲しか持たないアーティストだと、すでにグループが解散していたり、ソロシンガーやアイドルで引退をしていて活動をしていないと、目に触れる機会がほとんどなくなってしまうので、ほぼ聴かれない状態になってしまいます。

一発屋と呼ばれるアーティストも、売れた楽曲以外は、ほとんど再生されず、アルバムに収録される他の楽曲などは聴いてはもらえません。

ヒット曲すらなく、活動休止してから時間が経ったアーティストに関しては、ほぼ再生回数はないと考えたほうがよいでしょう。

同一楽曲でもミックスやマスタリングが違うと別楽曲扱いになる

また複数のベスト盤をリリースしているヒット曲を持っているアーティストは、代表曲は何枚ものアルバムに収録されている場合があります。

この場合、同一楽曲でも、ミックスやマスタリングが違うと、別の楽曲扱いになり、確実に再生回数は分散されますので、リリースの古いほうのベスト盤は再生回数が稼げない状態になります。

自虐っぽくなってしまいますが、わたしのメジャーリリースしている作品でも、カップリング曲であったり、シングル以外のアルバム収録楽曲は、年間1,000再生に満たない楽曲も当然あります。

楽曲配信者の選ぶ道

配信先からSpotifyを除外する

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わたし自身、仕事とは別に個人配信やインディーズ系アーティストとのコラボなどで、年に何度か楽曲配信をします。

自分で配信先を選択できる、今後の楽曲配信に関しては Spotify を除外して配信することに決めました。

もともと、誰でも無料でも聴くことのできる Spotify と YouTube Music は、他のプラットフォームに比べると、1再生の収益が1、2位を争う激安の還元率です。

登録者が多いとされているので配信していますが、Spotify も YouTube Music も音楽を聴くことにお金をかけたくない無料層が非常に多いです。

Spotify の還元率も低いですが、YouTube Music も有料のプレミアムプランのほうは還元率が高いですが、広告ありの無料プランのほうは、最安値ではないかと思われる酷いレベルの還元率です。

Spotifyの姿勢には同調できない

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別に個人配信レベルやインディーズ系アーティストとのコラボで多額の収益を出したいと考えているわけではありませんが、聴いてくれる人のことも考えて「配信作品 = 商品」として考えてミックスからマスタリングまで、時間を掛けてしっかりとやっています。

わたしがコラボしたインディーズ系アーティストでも、プロモーションを頑張っていたり、精力的に活動しているアーティストは、リリース初月一ヶ月に 2 ~ 10万再生くらいを出す人もいます。

しかし、過去の曲をいつまでプロモーションするということは、ありえませんので、2年後、3年後には、多分、年間1,000再生に達しなくなります。

その場合、Spotify では無料配信という形になってしまいますので、「音楽 = タダ」であってはいけないという考えを持っている人間からすると Spotify の姿勢には同調することはできません。

過去の作品を多く抱えるメジャーレーベルも、過去の作品でも何もしないより 1円でも入ってきたほうがよいと考えていますので、すべてではないにしても Spotify からの楽曲の引き上げは確実に行われると思います。

Spotifyも配信プラットフォームのひとつでしかない

著作物に対するSpotifyの非常に恐ろしい考え

前回も少し触れましたが、ノイズコンテンツや、AIによる不正操作の対策など、いろいろな理由を Spotify側は述べていますが、今回の改悪は実際のところは還元率の低すぎる Spotify からの楽曲の引き上げをチラつかせる人気メジャー・アーティストの引き止め策に思えます。

再生回数の出せないインディーズ系アーティストや、DIYアーティストを追い出したいという明確な Spotify側のメッセージと受け取ってもよいです。

Spotify の「アップロードされた60%にあたる6,000万曲が無報酬となる」という著作物に対する身勝手なルール作りは非常に恐ろしい考えです。

音楽配信プラットフォームはSpotifyだけではない

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投稿型の動画プラットフォームだと、YouTubeに代わる優れたサイトは正直ありませんが、音楽配信はSpotify 以外にも、Apple MusicやAmazon Musicなど優れたプラットフォームは多数あります。

Spotifyが世界シェアトップというのは、あくまでも無料で聴いているユーザーも含めての数字ですし、数ある配信プラットフォームのひとつでしかありません。

高域をバッサリとカットしているSpotify の無料プランの音質に関しては、エンコードの質も低く、有名どころのなかではワーストレベルの残念な音質です。

Spotify の改定に怒り心頭の人もいると思いますが、音楽制作に関わる人間にとって還元率や音質で劣悪なサービスを提供してきたSpotify を配信先とプロモーションから外すことができると考えれば、大した話ではないです。
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