ソニーとUMGがSunoを再提訴 – AIモデル「V6」と6万件の著作権訴訟

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ソニー・ミュージック・エンタテインメント(Sony Music Entertainment)とユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG)は共同で、2026年9月18日に生成AI音楽サービスSunoを再び提訴しました。

旧訴訟で61,026作品の追加を申立て

セイラー判事が追加を認めない判断

2026年8月18日、セイラー判事は61,026作品を現在の訴訟に追加する申立てをwithout prejudiceで認めない判断を示しました。

Suno AI訴訟でソニーとUMGの6万曲超追加を却下DMCA違反は審理へ」でも書いていますが、この判断は、61,026作品について著作権侵害がなかったと判断したものではありません。

すでに進行している訴訟に大量の新たな作品を追加すれば、証拠開示や審理が大幅に複雑化し、訴訟が長期化する可能性があります。裁判所はこうした手続き上の問題を重視しました。

一方で、without prejudiceであるため、原告側が別の訴訟でこれらの請求を追及することは妨げられません。

Suno AI訴訟でソニーとUMGの6万曲超追加を却下DMCA違反は審理へ
2026年8月18日、Suno AI訴訟で裁判所が判断。ソニーとUMGによる6万1026作品の追加は、審理の複雑化や長期化を理由に却下されました。一方、YouTubeからの音源取得をめぐるDMCA違反の主張は追加が認められ、今後の審理で争点となります。

そして9月18日に新たな訴訟へ

こうした経緯を経て、Sony MusicとUMGは2026年9月18日に60,202件の音源を対象に、Sunoに対して新たな訴訟を提起しました。

旧訴訟で追加を求めていたのは61,026作品だったため、数字は一致していませんが、旧訴訟で大量の作品を追加する申立てが退けられた後、SonyとUMGが対象作品を改めて整理したうえで、新たな訴訟として60,202件を対象に提訴したということです。

新訴訟でSunoの「V6」が焦点に

過去のモデルとの関係をめぐる争い

今回の新訴訟で特に注目されるのが、SunoのAIモデル「V6」です。

Suno側は、V6について、ライセンス契約などを背景に開発された新世代のモデルであり、過去のモデルとは異なる形で構築されたものだと説明しています。

これに対してSony MusicとUMG側は、V6を過去のモデルから完全に切り離して扱うことに異議を唱えています。

原告側は、旧モデルの出力や知識などが新しいモデルの開発に利用されていると主張しています。

特に知識蒸留(Knowledge Distillation)などを通じて、過去のモデルから得られた情報や能力がV6に引き継がれているのであれば、過去のモデルに関する著作権問題もV6と無関係ではないというのが原告側の主張です。

「毒された木の果実」という主張

この点について原告側は、V6を「the fruit of the same poisoned tree」、つまり「同じ毒された木から生まれた果実」と表現しています。

これは、旧モデルに著作権上の問題があった場合、そのモデルから得られた知識や出力などを利用して新しいモデルを構築しても、過去の問題を単純に切り離すことはできないという趣旨の主張です。

YouTubeからの音源取得も争点に

技術的保護措置の回避を主張

新訴訟では、Sunoが音源を取得した方法についても争われています。

Sony MusicとUMG側は、SunoがYouTubeの技術的保護措置を回避して音源を取得したと主張しています。

この問題は著作権侵害だけでなく、米国デジタルミレニアム著作権法(DMCA)における技術的保護手段の回避にも関係します。

つまり今回の訴訟では、AIモデルによる音源の利用方法だけでなく、そもそも学習に使用した音源をどのように取得したのかも争点となっています。

Suno側は事実を公式に認めている

マサチューセッツ州連邦地方裁判所に提出した答弁書(2026年9月1日付の回答)にて、Suno側は「オープンソースツール(yt-dlp)を使用して、YouTubeから学習用の音声データを取得・ダウンロードした」という事実を公式に認めました。

ただし、事実を認めた上で、YouTube上の動画は誰でも見られる(アクセス制御されていない)ため、ダウンロードした行為はあくまで「中間コピー(複製)」に過ぎず、フェアユース(公正利用)の枠内であると主張して逃げ道を作ろうとしています。

「YouTubeからリッピングして学習データを集めた」という決定的な証言が法廷記録に残ったことで、Sunoが「クリーンな技術企業」として主張を通すことは一層困難になり、この認諾が致命的(自爆)と言われています。

損害賠償金と新たに問われる「モデルの継承」

60,202件を基にした理論上の最大額

今回の新訴訟では、故意の著作権侵害について、作品1件あたり最大15万ドルの法定損害賠償が問題になる可能性があります。

60,202件すべてについて最大額が認められた場合、計算上は約90億3,030万ドルとなります。日本円では為替レートによって変動しますが、1兆円を大きく超える規模です。

新しいAIモデルは過去の問題から切り離せるのか

今回の訴訟で重要なのは、単純な学習データの問題だけではありません。

AIモデルは世代交代する際、過去のモデルから知識や能力を引き継ぐことがあります。旧モデルの出力を利用したり、知識蒸留によってモデルの能力を新モデルへ移したりすることもあります。

そのため、過去のモデルに著作権上の問題があった場合、新しいモデルがどの程度その影響を受けているのかという新たな問題が生じます。

Sony MusicとUMGは今回、この点からSunoのV6についても過去のモデルとの関係を問題視しています。

AI音楽の著作権争いは新たな段階へ

これまで生成AIをめぐる著作権訴訟では、「AIが著作物を学習することは認められるのか」という問題が中心でした。

しかし今回のSunoをめぐる訴訟では、それに加えて「過去のモデルから何が引き継がれたのか」という問題も前面に出ています。

旧モデルの学習データ、新モデルへの知識の継承、音源の取得方法など、複数の論点が絡み合うことで、AI音楽をめぐる著作権問題はさらに複雑になっています。

Sony MusicとUMGによる今回のSunoへの新訴訟は、旧訴訟から突然生まれたものではありません。

もともとの訴訟で、原告側は61,026作品を追加するための第2次訴え変更の申立てを行っていました。しかし、セイラー判事は2026年8月、その申立てをwithout prejudiceで認めない判断を示しました。

その後、Sony MusicとUMGはSunoに対する新たな訴訟を提起し、今回の訴訟では60,202件の音源が対象となっています。

さらに、新訴訟ではSunoの最新モデル「V6」と過去のモデルとの関係も問題になっています。

Suno側がV6を新世代のモデルとして位置付ける一方、Sony MusicとUMG側は、旧モデルから得られた知識や出力などがV6に引き継がれているとして、過去のモデルに関する著作権問題とのつながりを主張しています。

今回の裁判が、生成AIの学習データだけでなく、AIモデルから次のモデルへ引き継がれる「知識」や「能力」まで著作権法上どのように扱われるのかを考える重要な事例になる可能性があります。

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